空には無数の広告用ドローンが飛んでいる
今日のトップニュースは
会食を共にし、店から出てきたところを激写されたジャーナリストと政治家のスキャンダルだ
各社がスクープ合戦をやっている
2月、春とは名ばかりで冷たい風が吹く
でも自然の時計は正確だ
ふと目をやると水仙が花を付けていた
私はオバの反応を期待してその花を摘んだ
「ひゃーやめて寒い寒い!」
水仙を差し出すと思った通りの反応が返ってきた
空のオバちゃんはこの季節の花が苦手だ
梅、桃、水仙、椿、サザンカ
極端に寒がりのオバにとってその感触や見た目や匂いには凍える北風が染みついているのだそうだ
花にとっては迷惑な話だが
「いいところに来てくれたわ」
オバは部屋の片付けの真っ最中だった
今どきと思えるほど大量の紙の本や書類
その下から古いタブレットが出てきた
太陽の光に当てると起動し、絵が現れた
どうやらオバの子供の頃のものらしい
よく見るとそれは水仙だった
「き れ い」と順番に文字が現れ、
色とりどりのハートマークやきらきら光る星が楽しそうに動き始めた
「なんだ水仙好きだったんじゃん」
オバは本当はどの花も好きなのだ
子供の頃は北風の中で寒さに耐えながらも、外での遊びは楽しかったにちがいない
大人になってその寒さが身にこたえるようになり
もともと寒がりだったためにネガティブな記憶が上書きされてしまったのだろう
帰り道、空ではスクープ合戦が続いていた
新事実も次々と暴露されている
国を揺るがす深刻な秘密と、オモチャのような叔母の秘密
気がつくとすでに桃の蕾はふくらんで
堅く凍った土の上には白いナズナや瑠璃色のイヌフグリ……
早春の花たちは冷たい北風の中で
けなげにこの季節を彩っていた








